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慰謝料請求の要件
慰謝料請求をするためには、慰謝料請求することが出来る正当な根拠がないとなりません。
ここでは、不法行為に基づく損害に対する損害賠償(慰謝料)請求の場合として、概要を説明します。
<1>不法行為であること
不法行為に基づく慰謝料の請求をしようとする場合、不法行為として成立している必要があります。
加害者が未成年であっても、責任能力があれば、その加害者本人が損害賠償義務を負います。
不法行為には、一般の不法行為と特殊の不法行為とがありますが、それぞれに分けて概説すると、以下のとおりになります。
一般不法行為
一般不法行為の成立要件には、次の4つがあります。
1 | 過失責任主義 | 故意または過失による行為に基づくこと |
2 | 権利侵害ないし違法性 | 権利または法的保護に値する利益を違法に侵害したこと |
3 | 相当因果関係 | その行為によって予見可能な損害が生じたこと |
4 | 責任能力 | 加害者に責任能力があること |
1⇒ | 例:独身であると騙されて肉体関係を持った者には故意も過失もなく、その相手の配偶者に対する慰謝料の支払義務が生じません。 |
2⇒ | 例:交際中の独身男女間や不倫当事者間での、一方が他の異性と持った肉体関係については法的な保護がなく、慰謝料の支払義務が生じません。 |
3⇒ | 例:話をしようとした相手が突然外に飛び出して車にひかれた等、予測不可能な損害については責任を負いません。 |
4⇒ | 例:10歳未満の幼少の子供の行為によって生じた傷害等は、責任能力がないため慰謝料の支払義務が生じません。 ※親権者などの監督者が責任を負います。 |
特殊な不法行為
特殊な不法行為とは、一般不法行為とは異なる成立要件を定め、主として責任を加重するものです。
1 | 監督者責任 | 責任能力のない未成年や心神喪失者の加害行為については、監督すべき法定義務者(親権者、後見人、学校の教員、等)が損害賠償責任を負います。 |
2 | 使用者責任 | 従業員が業務中に他人に損害を与えた場合には、その加害者とあわせて、使用者も損害賠償責任を負います。 |
3 | 工作物責任 | 工作物の設置や保管の瑕疵によって他人に損害を生じさせた場合、1次的には占有者、2次的には所有者が、損害賠償責任を負います。 |
4 | 動物占有者責任 | ペットが他人を噛んでケガさせた場合等、飼主や保管者は、損害賠償責任を負います。 |
5 | 国家賠償法 | 公務員の不法行為や公の営造物によって損害が生じた場合には、国または公共団体が損害賠償責任を負います。 |
6 | 製造物責任法 | 製造物の欠陥によって損害が生じた場合には、製造者(メーカー)が、損害賠償責任を負います。 |
<2>具体的損害が生じていること
具体的な被害の事実があれば、治療費や物損はもちろん、精神的苦痛などの財産以外の損害も請求することは可能ですが、「暴行があったが怪我も器物損壊もしていない」等の具体的な被害が生じていない事案については賠償請求は認められません。
<3>相当な因果関係があること
不法行為と損害の間に、通常予見しうる範囲の損害(通常損害)、および、その事情を予見し、又は予見することができたことを立証出来る損害(特別損害)が対象であり、生じた損害との因果関係が予見不可能な場合には、責任を負いません。
<4>宥恕(許す)していないこと
不法行為として成立していた場合であっても、不法行為の事実や加害者を知った後、一度でも不法行為を許した場合、慰謝料請求権の放棄といえますから、その後になって、相手に慰謝料請求をすることは許されません。
<5>すでに充分な賠償を受けていないこと
当然ですが、共同不法行為の場合等、加害者の一人から相当な額の慰謝料を受け取っている様な場合には、損害賠償は済んでいるとみなされますから、他の加害者に対する慰謝料請求をすることは出来ません。
<6>時効にかかっていないこと
不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為の事実や加害者を知ったときから3年で消滅時効にかかります。
もっとも時効というのは、相手方が時効の援用をしない限り、自動的に請求権が消滅するわけではありませんが、大半の場合は時効を主張されますので、請求が出来なると思った方が良いかと思います。
民法第724条 | 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。 |
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