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暴行、傷害、DV等の慰謝料請求
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傷害とは、人の身体などを傷つける行為のことであり、判例・通説によれば、生理的機能に障害を与えることであるとされています(生理的機能障害説)。 人の生命や身体は、法律上の保護すべき対象であり、暴行行為や、故意または過失によって、相手方に傷害を生じさせた場合には、民事上、「不法行為」となり、慰謝料その他の損害賠償義務が生じます。 また、刑事上も、傷害罪(刑法第204条)であれば15年以下の懲役または50万円以下の罰金、暴行罪(刑法第208条)なら、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料、過失傷害(刑法第209条)であれば、30万円以下の罰金又は科料、として、それぞれ、刑罰に処せられる恐れのある「犯罪行為」と定められています。 |
暴行・傷害トラブルの発生
比較的、良くあるケースとしては、次のようなものがあります。
暴行、傷害
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過失傷害
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暴行とは
「暴行」とは、講学上の広い意味では、人の身体に向けた物理的な危害の行使のことをいいます。
刑法上の用語は、日常用語の「暴行」とは少し意味が異なり、
生理的機能に傷害を受けた場合を「傷害罪」といい、
傷害を受けなかった場合を「暴行罪」といいます。
過失によって傷害を受けた場合を「過失傷害」といいます。
刑法第204条 | 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 |
刑法第208条 | 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。 |
傷害罪の成立は、暴行によるものとは限りません。
過去には、いたずら電話や騒音によって、不眠・目眩など通院するに至らしめた場合も、身体の生理的機能を傷害したものとして、傷害罪で逮捕・起訴された事例もあります。
喧嘩やDV、セクハラ・パワハラなど、理由はどうであれ、暴力行為は、暴行または傷害という犯罪行為ですから、刑事告訴することにより、刑罰を求めることが出来ます。
また、民事上も不法行為(民法第709条・710条)となり、慰謝料請求をすることが可能です。
ただし、ケンカの場合には、過失相殺の問題となります。
その場合は、怪我(ケガ)の大小よりも、最初に手を出した側の方が、はるかに帰責性が高いということになります。
なお、仮に一方が、もう一方にめがけて石を投げつけた場合、刑法上、相手にあたって怪我をした場合には「傷害」であり、あたらずに怪我をしなかった場合が「暴行」ということになります。
また、あまりに酷い誹謗中傷や侮辱・暴言などを受けたため、我慢の限界を超えて、思わず手を出してしまった、
等という事情があるる方もいます。
しかしながら、意図的な挑発は限度の問題もあると思いますが、原則として、法律上、やはり「暴行」・「傷害」というものは、立派な犯罪行為なのです。
心情的な問題は主観的要素が大きく、判断が難しいですが、あくまでも、言葉でしゃべることと暴力行為とでは比較にならない、ということです。
よって、多少は事情が考慮されたとしても、通常、法的な賠償責任を免れることは出来ません。
傷害事件の被害に対して請求出来るもの(損害項目)
傷害事件において、被害者が加害者に請求することが出来る項目には、以下のようなものがあります。
損害項目 |
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※後遺症が残る場合は、別途、後遺障害慰謝料と逸失利益 |
通院または入院をした病院やクリニックの領収書を紛失してしまった場合、「領収書」そのものの再発行は難しいですが、「領収額証明書」「支払証明書」等の名称の書面の発行はしてもらえますので、お願いしてみるのがよいです。
個人の医院・クリニックであれば領収書の再発行もしくは領収書の控えのコピーをもらえる場合もあります。
傷害によるPTSDの慰謝料
PTSDとは、日本語では「心的外傷後ストレス障害」といいます。
事故・事件の被害など極度のストレス体験により、時間が経ってからも、強い恐怖反応を引き起こす症状のことです。
以下のような症状が1ヶ月以上続く場合には、PTSDと診断される可能性があります。
PTSDの主たる症状 |
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身体的なケガの治療が終わっても、その後PTSDについての治療が続いている場合は、PTSDの治療期間も含めて慰謝料による賠償の対象となります。
また、PTSDが半年以上続く場合には、後遺障害(9級、12級、14級)の慰謝料が認定される可能性もあります。
ただし、交通事故などの「過失傷害」の場合には、PTSDと事故との因果関係が争われることも多いので注意が必要です。
喧嘩における過失相殺
喧嘩において、双方が攻撃をしている場合には、必ずしも「喧嘩両成敗」で5対5になる訳ではありません。
ケンカになった原因、事情経緯、双方の行為の態様、損害の程度などによって「過失相殺」の法理により、「過失割合」が判断されます。
被害者が加害者を憤慨せしめて加害行為を誘発したというような事情の有無なども考慮されます。
相手からの攻撃に対して、報復的に攻撃をした場合でなく、単に防戦しただけの場合であれば「正当防衛」として責任を負わない可能性もありますが、極めて厳格に判断されます。
この「過失割合」については、非常に高度な法律判断を要する項目であるため、弁護士に相談されて助言を受けることをお勧めします。
保険利用について
暴行傷害による怪我について、一般の国民健康保険や社会保険に関しては、加盟している国民健康保険や健康保険組合、協会けんぽなどへ「第三者行為による傷病届」を提出することで利用することが可能です。
この場合、被害者(被保険者)は窓口で3割負担し、残り7割は、保険組合等から加害者に求償請求することになります。
なお、被害者側にも過失責任がある場合は、別途に保険組合等から返還請求を受けるおそれがありますので注意が必要です。
民間の生命保険会社や損害保険会社による「傷害保険」については、「急激」「偶然」「外来」の3つの要素が重なった場合のみが補償の対象となるため、交通事故などの不慮の事故(過失による傷害)のみが対象であり、故意による暴行傷害などの被害に関しては利用することが出来ません。
傷害事件での被害届・刑事告訴
傷害を受けて被害届を出す、という場合は、その傷害を受けた時点で、というのが原則です。
調書を作成してもらい、すぐに病院へ行って診断書をもらい、警察に届け出る、というのが一番です。
全く病院にも警察にも行かれていない、という場合、請求金額や相手の社会的地位などの事情にもよりますが、
きちんとした金額の根拠を説明出来ないため、示談に応じてもらうこと自体が難しくなる場合が多いですので、
出来る限りは、きちんと病院と警察へ行かれることをお勧めします。
なお、警察は、1度足を運んだくらいでは被害届を受理してくれない場合も多いですが、
それでも、相談に行った日時や相談した内容は、すべて警察署の記録に残りますので、
行くことに重要な意味があります。
警察は、基本的には、特別に大きな怪我ではなく、民事的解決が可能であると思われる場合には、示談などの民事的解決を勧めます。
そもそも、被害届や告訴状を提したい理由が、慰謝料や治療費を支払わせたいから、というような、民事的な損害賠償を目的としていると思われると、事件扱いにすることを嫌がられます。
日にちが経ってから被害届を出そうとすると、決まって、
「どうしてすぐに出しに来なかったんですか?」
「診断書の怪我が、その当日の傷害のみによるものだという立証が難しいよ」
「慰謝料の要求に折り合いがつかないというなら、弁護士に相談して下さい。」
「連絡先も分かっていて話し合いが出来るのだから、示談で解決して下さい。」
等々、否定的な対応をされることもあります。
被害届を受理してもらえない場合、刑事告訴する、ということになりますが、
刑事告訴の場合も同様です。
簡単に受理してもらえない場合が多くあります。
そもそも、受理するかしないかの半田は、警察署の裁量に委ねられています。
警察としても、散々手間をかけて捜査し、人員や時間を費やしても、
途中で、
示談成立→告訴取り下げ、となる場合が多く、
そうなると、単なる民事の道具に使われただけで、無駄足になっってしまう、
と思われ、消極的・否定的な反応をされてしまうのです。
これまでの傾向からいうと、
- 相手がヤクザ・暴力団関係者、又はそのような固有名詞を出す相手の場合
- 慰謝料や治療費を請求する内容証明を出したが、無視されたような場合
- 長期入院や後遺症が残る等、怪我の程度が甚大な場合
示談の可能性が低い=民事的解決の余地が無いだろうと思われる場合には、
比較的きちんと受理されやすい傾向にあるようです。
実際、以前に某警察署に告訴状を持って行った際、そこの刑事課長さんに、
「ほとんどが、刑事告訴→示談成立→告訴取り下げ、になる。
結局、要求金額に応じさせたいための道具で告訴する人が多い。
そうなると、正直、民事介入と変わらないでしょう?
だから、慰謝料は一切要らないというんだったら、受理するけど、
そうじゃ無ければ、どんな弁護士が来ても、私は受け付けないよ。」
なんて言われたこともあります。
傷害事件の示談金額
裁判外の示談の場合、原則として、当事者間の合意さえ得られるのであれば、慰謝料の金額は自由です。
かといって、あまりに被害者感情が先走って加害者に高額な請求をしてしまうと、
逆に相手が「恐喝されてる」と警察に駆け込む場合もありますので、ご注意下さい。
最終的には、ケガの程度、入通院の有無、治療の期間、等によっても違いますが、
それほど大きなケガでなく、休業損害や物損なども無い場合でしたら、
「刑事告訴や被害届を行わない」という条件を付けてもらい、
仮に略式起訴となった場合に下される罰金(10万〜30万)での示談を提示されるのも一つの方法です。
加害者の社会的地位が高い場合など、前科がつくことや実刑判決を受けることを恐れて、高額の示談に応じてくる場合もあります。
あくまで個々の事案によって示談の金額は変動が大きいですが、平均すると、相当の示談金を支払っている場合ほど、不起訴や不処分、および減刑となることが多い傾向にあります。
「慰謝料算定の実務」第2版(ぎょうせい)千葉県弁護士会編 より抜粋
解決金額 (加療期間) | 処分結果 | 事案の概要 | |
---|---|---|---|
1 | 10万円 (1週間) | 懲役1年2月 執行猶予5年 | 酒に酔って隣人の側頭部を1回殴打した |
2 | 10万円 (1週間) | 罰金10万円 | 酔って居酒屋の店長を殴った |
3 | 10万円 (1週間) | 不起訴 | 被害者に言い掛かりをつけられて肩を押したところ、被害者が尻もちをついて打撲傷を負った |
4 | 15万円 (1週間) | 懲役1年 執行猶予4年 | 酒に酔って被害者にからみ、一方的に顔面等を数回素手で殴った |
5 | 50万円 (1週間) | 不処分 | 加害者女性の交際相手と関係を持った被害者女性に対し、髪を切る、殴る、などの暴行を加えた |
6 | 100万円 (1週間) | 不起訴 | 会社の同僚数名がキャバクラ店員と揉め、店員の顔面を手拳で殴打するなどした。 |
7 | 100万円 (10日間) | 罰金40万円 | 交際中の女性の顔部及び上腕部を拳で殴った。 |
8 | 2万円 (2週間) | 懲役1年6月 執行猶予3年 | 酔って男性をゲンコツで1回殴った。 |
9 | 20万円 (2週間) | 不起訴 | 後方から車であおられたとして、後方車両の運転手に暴行を加えた。 |
10 | 40万円 (2週間) | 罰金20万円 | 同居の女性に木片等を投げつけた。 |
11 | 300万円 (2週間) | 罰金5万円 | 団体役員の男性が職員の女性に対して暴言を吐いた上、腕を掴む等の暴行を加えた。 |
12 | 25万円 (1ヶ月) | 罰金30万円 | 上司と口論になり、上司の顔面を拳で殴りつけた。 |
13 | 120万円 (1ヶ月) | 懲役1年6月 執行猶予5年 | 店員の受け答えに因縁をつけ、転倒させた上、踏みつける、殴るなどの暴行を加え、肋骨骨折等の傷害を負わせた。 |
14 | 100万円 (1ヶ月2週間) | 不起訴 | 酩酊状態で被害女性の顔面を手拳で数回殴打した。 |
15 | 30万円 (2ヶ月) | 懲役2年 執行猶予4年 | 店員の受け答えに因縁をつけ、転倒させた上、踏みつける、殴るなどの暴行を加え、肋骨骨折等の傷害を負わせた。 |
16 | 300万円 (2ヶ月) | 罰金20万円 | 内縁中の女性と揉み合う中で骨折の傷害を負わせた。 |
17 | 90万円 (3ヶ月) | 罰金40万円 | 交際相手を殴った。 |
入通院慰謝料算定表
もしも、ケガの程度が大きく、通院または入院が長期に及ぶ場合には、
交通事故の際に利用する「入通院慰謝料算定表」を参考にされると良いかと思います。
なお、診断書に記載された「全治●●間」というのは、あくまで見込みです。
算定自体は、実際に入通院をされた期間や実日数によって行いますので、ご注意下さい。
また、もしも診断書に記載された期間を超過しての入通院がある場合には、再度、
その延長した期間の分の診断書も取得されるようにして下さい。
後遺障害等級表
また、ケガの程度が大きく、後遺症が残るような場合には、別途、その内容により、後遺障害の慰謝料や逸失利益も請求することになります。
入通院慰謝料・後遺障害慰謝料の簡易計算書
必要項目を記入するだけで、一般的な慰謝料の基準が算出される「簡易計算書(Excelヴァージョン)」が、こちらからダウンロード可能です。
犯罪被害者等給付金支給法
暴行障害などの生命や身体を害する犯罪行為の被害に遭われて、死亡や重傷、もしくは後遺障害などの被害を受けた場合で、加害者が無資力であるなどの理由で正当な損害賠償を受けられない被害者やその遺族に対しては、一定の条件の下、『犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律』に基づき、国からのお見舞い金として「犯罪被害者等給付金」の支給を受けることができます。
詳しくは、こちら >> 犯罪被害者等給付金支給法
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