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慰謝料の時効

慰謝料も、一定の期間によって、消滅時効にかかります。
慰謝料の発生原因には、不法行為に基づく場合と債務不履行に基づく場合があります。

債務不履行に基づく慰謝料請求の場合は、民法第167条1項により10年と定められています。

不法行為に基づく慰謝料請求は、加害者や損害が生じたことを知った時から3年で時効となります。
令和2年の民法改正により、令和2年4月1日以降の事件・事故については、生命や身体を害した場合(暴行傷害や人身事故など)は時効が5年、物損事故は時効が3年となっております。
令和2年3月31日までに発生した事件や事故については、一律で時効が3年となります。
ただし、令和2年3月31日までの暴行傷害や人身事故であっても、令和2年4月1日の時点で3年の消滅時効が完成していなければ、改正民法に基づく5年の時効期間が適用されます。
また、事実を知らなくても不法行為のときから20年を経過した場合も時効となります。

債権は、10年間行使しないときは、消滅する。

不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
新法第742条の二の規定は、不法行為による損害賠償請求権の旧法第724条前段に規定する時効がこの法律の施行の際既に完成していた場合については、適用しない。

時効期間について、まとめると、以下の表のとおりです。

慰謝料の時効の時期

項目 起算日 根拠条文 年限
債務不履行 債務不履行になった時 民法 第167条 第1項 10年
不法行為 不法行為の事実及び加害者を知った時 民法 第724条 3年(生命や身体を害した場合は5年)
不法行為の時 20年

不倫の慰謝料の時効

不倫した第三者(浮気相手)への慰謝料請求の場合は、不倫の事実を知ったときから3年で時効成立となります。
また、不倫関係(不貞行為)が終わったときから20年を過ぎてしまった場合も時効成立となります。


婚約破棄の慰謝料の時効

婚約破棄の場合は、債務不履行説と不法行為説がありますが、債務不履行説によれば、婚約破棄した時または破棄された時から10年、不法行為説によれば、破棄された時から3年の経過をもって時効となります。


名誉毀損の慰謝料の時効

名誉毀損の場合は、名誉毀損された事実または名誉毀損した相手を知ったときから3年、または名誉毀損の事実があったときから20年、いずれかの期間が経過した場合は、時効となります。
もっとも、ネットへの誹謗中傷などで、その表示が抹消されない場合、不法行為の継続中となりますから、時効の起算が開始されず、時効にならない、という解釈が成り立ちます。


暴行・傷害の慰謝料の時効

暴行を受け、傷害を受けていない場合は、暴行を受けた日の翌日から起算して5年で時効成立となります。
傷害による損害(治療費、慰謝料、休業損害、など)については、治癒した日または症状固定日(症状が安定し、これ以上は改善しないと判断された日)から3年で時効成立となります。
※症状固定日の判断は、原則として、医師の診断書の記載が基準となりますが、裁判の場合には、実際の事情経過によって判断されますので、注意が必要です。


セクハラの慰謝料の時効

セクハラ被害によって生じた損害(慰謝料、治療費、退職による逸失利益)は、セクハラ行為が止んだときから3年時効となります。
ただし、セクハラ被害によって、うつ病やパニック障害、PTSDと診断された場合、その損害は、治癒した日または症状固定日(症状が安定し、これ以上は改善しないと判断された日)から3年で時効成立と解釈される余地はあります。


交通事故の慰謝料の時効

令和2年4月1日以降の交通事故については、人身事故は時効が5年、物損事故は時効が3年となっておりますが、自賠責保険の被害者請求権は、事故発生日から3年(平成22年4月1日より前に発生した事故の場合は2年)で時効になります。
ただし、自賠責保険への被害者請求、自賠責保険への異議申立、自賠責保険への時効中断申請、自賠責保険会社からの支払、などがある場合には、時効中断となり、その時点から起算して3年で時効となります。

任意保険会社への加害者請求権は、事故発生日から3年(平成22年4月1日より前に発生した事故の場合は2年)で時効になります。
ただし、加害者の任意保険会社からの仮渡金(仮払金)の支払や加害者の任意保険会社が作成する債務承認書や示談案の提示があった場合には、時効中断となり、その時点か起算して3年で時効となります。




時効の更新(中断)

時効の更新(中断)といって、加害者や損害が生じたことを知ってから3年以内に訴訟を提起するなどの法的手続きを取るか、示談を成立させる、又は弁済を受けることで、時効の進行を振り出しに戻すことが可能です。
また、どうしても間に合わないという場合には、時効の停止といって、内容証明で請求すること(催告といいます)で、6ヶ月間の猶予を受けることが出来、その間に示談を成立させるか裁判を起こすことで、時効の成立を回避することも可能です。


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